2014/08/26

マーガリンは毒じゃない。

マーガリン

という単語でググると、
・危険
・プラスチック
・体に悪い
・トランス脂肪酸


などが一緒に検索されていたりする。


結論から言えば、現状危険性はほとんど無いし、プラスチックではない。
ついでにトランス脂肪酸たっぷりだろうとマーガリンは腐る。








Google検索で上位に入っていたこの記事に突っ込んでみる。



食べたくなければ食べなければいいだけなのだが、
何処かで見たものを検証も無しに煽り立てるように書くのはスマートじゃないと思う。


この記事の中から。

----以下引用----
マーガリンは、窓際に何年も置いて光や空気、 自然にある細菌その他にさらしても少しも変化しない。 カビも生えないし昆虫が卵を産みつけることもなければ ネズミが食べることも、ゴキブリが寄ってくることもない。 こんなもの食べてるんですよ。食品とは言いがたいですね。 まるでプラスチックか金属です。
----引用ここまで----


私は3年ほどマーガリン類の研究開発に従事していましたが、

マーガリンはカビるし、腐る。

特に、夏場は赤・緑・黒と、カラフルなカビが生えるし、腐っていい匂いも放つ。

たまたまこの記事が参照した記事を書いた人の実験ではそうだったのかもしれないが、

マーガリンの原料は
・油脂
・水
・粉乳
・塩類
・香料
・着色料
などであり、バターの模造品として誕生した(参照:日本マーガリン工業会webサイト)わけで、バター風味を持たすために、乳原料を使用したりする。
言わば、牛乳と油を混ぜ合わせたようなもので、当然腐る。

恐らく、これはタンパク原料の入っていないマーガリン、或いはショートニングを用いた実験結果ではなかろうかと推察する。

資化するものがなければ増えようがない。

エサがなければカビも増えようがないし、腐敗菌も繁殖できない。



----以下引用----
マーガリンは腐らないプラスチック?:トランス脂肪酸
マーガリンややショートニングは、植物性油脂を化学処理し、
常温で固体を保てるようにした食品です。

この食品の化学処理が「水素添加」と呼ばれる方法で、
不飽和脂肪酸の水素が足りない場所に強引に水素を結びつける方法です。

こうして出来たものが「トランス脂肪酸」です。
「トランス脂肪酸」は、安定した構造を持っているので、
常温でも固体になり、酸化しにくく、保存性が高いのです。

加工食品には使いやすいというわけなのですが、
この構造がプラスチックそっくりな食品というわけです。
----引用ここまで----

先ず、水素添加は不飽和脂肪酸を飽和脂肪酸にする処理であり、高圧・高温下での処理が一般的である。
その結果、副産物としてトランス脂肪酸が生じるので、この記事の書き方では誤解が生じる。

トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸の構造異性体(シス型がトランス型に異性化したもの)なので、

不飽和脂肪酸の水素が足りない場所に強引に水素を結びつける方法です。

という説明ではトランス脂肪酸が生成する過程を説明できていない。


不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて化学的に不安定であり、トランス型はシス型に比べて安定性が高いため、水素添加の工程でトランス型に転移すると考えられる。
それ故、飽和脂肪酸を生成する過程でトランス脂肪酸ができてしまう。

そして、トランス脂肪酸はその特性が非常に有用であったため、敢えてトランス型に転移させるような水素添加の方法がとられた経緯がある。
※特性は、固さ、口溶け、風味、保存性など。


トランス脂肪酸が騒がれる前の、フライドチキンとかの匂い、これがトランス脂肪酸に依るところが大きく、所謂【硬化油臭】と呼ばれている。
当時のショートニングのトランス脂肪酸含量は約40〜50% (モノによってはもっと)で、これで揚げたフライドチキンはとても美味しい。

実際に何度も試食したけれど、確かに美味しい。職場の人も皆、トランス脂肪酸たっぷりの方が美味いと口を揃えていた。

これをトランスフリーにして風味を同じにするのに、各社血眼になって研究開発を行ってきているわけです。


そして、
構造がプラスチックそっくりってのがイマイチよくわからないけれど、
こういう記事にトランス脂肪酸の構造式は載っていても、"そっくり"だというプラスチック(しかも何だかわからない)の構造式が併載されているのは見たことことがない
 (何処かにあったら教えてほしい)。



マーガリンやショートニングなどのような固形の油脂製品を
可塑性油脂」(かそせいゆし)と呼び、
この「可塑性」を英語で「Plasticity」
可塑性を持たせることを「plastication

語 としては、プラスチック と同じものなわけだ。


元々のソースまでは確認してない(スマン)けど、多少の誤解が一人歩きして尾鰭背鰭が大きくなって来たと思われる。

特に、
----以下引用----
そして、さらに、脂肪専門の化学者たちからは、
水素添加することを「オイルをプラスチック化する」と呼ぶと、聞かされたのです。
----引用ここまで----
と言ったくだり、plasticated oil  (可塑性を持たせた油脂、つまり水素添加した油脂)の誤訳ではないかと思われる。

油脂メーカーに勤めていて、油脂の水素添加もたびたび実験してきたが、
「オイルをプラスチック化する」なんて聞いたことが無い。



----以下引用----

マーガリンは既に、ヨーロッパでは販売中止、 製造禁止している国もあります。

海外では、特にオランダはトランス型脂肪酸を 含む油脂製品が販売禁止。 デンマークもまた毒物扱いとされ禁止

----引用ここまで----

「マーガリン」を販売禁止にしている国が具体的に何処なのか、調べても見つけられない。
そもそも多くの国の食品産業や食文化に深く根差しているマーガリンという素材を、そう簡単に製造・販売禁止にするなど考えにくい

欧米各国では、トランス脂肪酸の規制として、例えば「2%を超えるものは禁止」などと言った制限を設けているが、必ずしもトランス脂肪酸が含まれていたら即販売禁止、というわけではない

天然のトランス脂肪酸というものも存在する。主に反芻動物の消化器系のバクテリアにより生成され、肉(脂肪)や乳(乳脂肪)に含まれる。

ちなみに、
バターのトランス脂肪酸含量は2〜4%程度である。

最近の国内メーカーのマーガリンよりもトランス脂肪酸含量が高い。

天然のトランス脂肪酸は、水素添加で生成されたトランス脂肪酸より安全!
とか思っちゃう人もいるかもしれないけど、
現状、トランス脂肪酸が天然か否かを見分ける分析手法があるとは聞いていない。



その他、トランス脂肪酸摂取により健康障害が引き起こされることが危惧されている。様々な研究により裏付けがとられているものもあるが、それなら一昔前のトランス脂肪酸たっぷりのものを食ってた世代はまだまだ元気じゃねーか。とか思うのですが、そこは今後の研究結果を待ちたい。



とかく「欧米では規制されている」ということで危険だと書かれている記事が多いが、

そもそも日本人の食生活では油脂その物の摂取量が少なく、

相対的にトランス脂肪酸の摂取量も欧米に比べてはるかに少ないため、実質的にトランス脂肪酸が健康被害を引き起こす可能性は低い。


と言うのが日本マーガリン工業会の見解でもある。


と、ネット検索の上位にくる記事の中身をざっと検証(というほどでもないが)すると、上記のようなことになります。


次回はもう少し続きを書きたいと思います。










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